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「 そのまんまをしょって 」
PM 5:00








何度来ても遠い。
なかなか顔を出さないバスに、たまに迷子になってしまったのかと思う。
さっきの街中と違い、カラフルさのかけらもない。
薄い緑と、薄い水色と、少し白に近づいたみたいな。
バスの外に流れる景色は進んでるのかも分からないくらい代わり映えしない。
抱えたリュックに力を込めると、ぷしゅうと音を立ててへこんだ。
わたしもリュックもそのまんまの重さだ。
家の前までバスが届けてくれればいいのに、じとっとしたからだで縁側に寝転ぶ。
たいした風もないのにカラリと鳴る風鈴だけが救いだ。





















「ねぇ」
「なぁに」
なんだったっけ。自然と声が出ていた。
「お母さんにこれ持ってってあげなさいね」
目元をしわしわにして、テーブルの上がおばあちゃん色だ。
帰りのリュックは重くなりそうだな。
からっぽのリュックできてよかった。





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